【社会保険情報】通勤手当の非課税限度額引上げと支給額を決定する際の留意点

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はじめに
2025年から2026年にかけて、企業の実務に直結する重要なルール変更が続いています 。その中でも、多くの従業員に関係するのが「通勤手当」の取り扱いです。2025年11月20日に施行された改正所得税法施行令により、マイカーや自転車で通勤する方の税金がかからない範囲(非課税限度額)が引き上げられました。
この変更は、日々の給与計算だけでなく、会社のコスト管理や規程のあり方にも影響を及ぼします。本記事では、改正の具体的な内容と、会社がトラブルを防ぐために整備しておくべき支給基準、そして経営的視点からのアドバイスについて、分かりやすく解説します。
通勤手当の
「非課税限度額」
引き上げの全容
- 今回の改正は、主にマイカーや自転車を利用して通勤している従業員が対象です。
- 改正の背景と適用時期 今回の改正は2025年11月20日に施行されましたが、実務上の大きな特徴として、2025年4月1日に遡って適用される点が挙げられます。
- 対象となる従業員 マイカーや自転車等を使用しており、片道の通勤距離が「10km以上」ある従業員が対象となります。
- 具体的な引き上げ内容(1ヶ月あたりの限度額)
◦ 10km以上15km未満: 7,100円 → 7,300円
◦ 15km以上25km未満: 12,900円 → 13,500円
◦ 25km以上35km未満: 18,700円 → 19,700円
◦ 45km以上55km未満: 28,000円 → 32,300円 なお、2km未満(全額課税)や2km以上10km未満(4,200円)の区分については、今回の改正による限度額の変更はありません。

給与規程の確認と
実務上の留意点
法改正が行われた際、会社が最も注意しなければならないのが「自社の給与規程」との整合性です。
- 自動的な支給額アップの可能性 多くの企業では、マイカー通勤者の手当について「所得税法に定める非課税限度額の範囲内で支給する」といった規定を設けています。このような規定がある場合、今回の法改正に伴い、会社が支払う通勤手当の額も自動的に引き上げられることになります。
- 規定の見直しと不利益変更 今後も社会情勢の変化に伴い、通勤距離の区分や金額が変わる可能性があります。この機会に現状の規定内容を見直すことも一案ですが、支給額を従来の限度額に据え置くなど、従業員にとって不利になる変更を行う場合は「不利益変更」に該当する可能性があるため、慎重な検討と手続きが必要です。
トラブルを防ぐための
「支給基準」の作り方
通勤手当の支給については、法律による義務や細かい金額の定めはありません。支給の有無や算出方法は、会社の任意で決めることができます。
- 一般的な算出方法 実務上は、通勤に必要となる「実費相当額」を補填するという意味合いから、以下のように決定するのが一般的です。
◦ 公共交通機関: 通勤定期券代や1日あたりの運賃額を基に決定。
◦ マイカー: 通勤距離、一般的な燃費、市場のガソリン代を考慮して算出。 - 「支給上限額」設定の重要性 特に公共交通機関を利用する場合、非課税限度額は「1ヶ月あたり15万円」と非常に高額です 。会社が独自の「上限額」を設けていない場合、従業員が遠方に引っ越した際に、会社の想定を超えるコストが発生するリスクがあります。現状、遠方からの通勤者がいない場合であっても、会社としての負担上限を明確にしておくことが、健全な経営には不可欠です。

【経営参謀社労士より、
ワンポイントまとめ】
今回の通勤手当の改正には、国のメッセージが込められています。
それは、「コストや制度の壁を意識せず、意欲ある人が最大限に能力を発揮できる環境を整える」ということです。
経営者・総務担当者の皆様が取るべき戦略的行動は以下の点です。
- 規定の適正化: 「非課税限度額=支給額」という安易な連動だけでなく、自社の財務状況に見合った独自の上限設定を検討してください。
- 積極的な情報提供: 制度改正は従業員に不安を与えがちです。「今回の改正で手取りがどう変わるのか」「安心して働ける環境を会社がどう整えているか」を丁寧に周知することが、離職防止と採用力の強化に直結します。
今回の非課税限度額の引き上げを、単なる「事務作業」として終わらせるのではなく、自社の雇用環境を再構築する絶好の機会として活用してください。


