最低賃金が上がる季節に、見直しておきたい4つのこと

今日10月1日から、東京都の最低賃金が1,280円になりました。今年は全国平均で56円の引上げとなり、多くの会社で給与の見直しを進められたことと思います。

最低賃金への対応というと「時給の見直し」が思い浮かびますが、実はその周りにも、あわせて確認しておきたいポイントがいくつかあります。今回は、ある顧問先(仮にN社)で一緒に確認した内容をもとに、4つのポイントをご紹介します。

1.月給の方も、時間額に直して確認を

N社では、パートの方の時給は9月中に見直しが済んでいました。あわせて正社員の給与も確認したところ、入社1年目のCさんの給与が、最低賃金をわずかに下回っていることがわかりました。

Cさんの給与は、基本給200,000円、皆勤手当10,000円、通勤手当15,000円です。

最低賃金は、月給の方も「1時間あたりいくらか」に直して比べます。このとき、皆勤手当・通勤手当・家族手当・残業代・賞与などは最低賃金の計算に含めないルールになっています。

N社の1か月の平均所定労働時間は160時間なので、
基本給200,000円 ÷ 160時間 = 1,250円
となり、1,280円に届いていませんでした。支給総額だけを見ると余裕があるように見えるため、気づきにくいポイントです。

時給の方だけでなく、月給・日給の方も一度計算してみていただくと安心です。また、支店や店舗が別の都道府県にある場合は、その地域の最低賃金と発効日で確認します。

2.残業代の単価も一緒に上がります

時給や基本給が上がると、残業代の1時間あたりの単価も上がります。たとえば時給1,280円の方の残業単価は、1,280円×1.25=1,600円です。
特に確認しておきたいのが、固定残業手当(みなし残業代)を導入している場合です。

N社では「月20時間分として31,260円」と定めていましたが、Cさんの基本給を205,000円に見直した結果、20時間分の残業代は32,040円になり、780円不足していました。

固定残業手当は「残業代の前払い」のようなものです。基本給を見直したときは、固定残業手当の金額も一緒に確認しておくと、後から差額の精算で慌てずにすみます。給与計算ソフトの単価設定が更新されているかも、あわせてご確認ください。

3.社会保険の「月額変更」は3か月後に

社会保険料は、給与の金額を区切りごとに分けた「標準報酬月額」という等級で決まります。基本給や時給のように毎月決まって支払われる給与が変わり、その後3か月の平均で等級が2つ以上変わった場合は、年の途中でも見直しを行います。これを「随時改定(月額変更)」といいます。

上がった時給が初めて反映された給与の支給月から3か月の平均で判定することになります。最低賃金の上昇分だけでは対象にならないことも多いのですが、この3か月は残業代も含めて計算するため、年末に忙しくなる業種では対象になる場合があります。

たとえば10月・11月・12月支給の給与で判定する場合は、「時給が変わった方は、1月に月額変更の判定をする」と予定に入れておくと安心です。

1月分から標準報酬月額が変わった場合、社会保険料は前月分を翌月の給与から控除するのが原則のため、通常は2月支給の給与から控除額が変わります。(※当月分を当月の給与から控除している会社もあるので、自社の設定をご確認ください)
また、扶養の範囲で働いているパートの方にとっては、時給が上がると同じ勤務時間でも年収が増えます。年末に向けて勤務時間の調整を希望される方もいらっしゃるかもしれませんので、早めにお話を聞いておくと、シフトの計画も立てやすくなります。

4.社員同士の給与バランスにも目を向けて

新人の方の給与が上がると、先輩社員との差が縮まることがあります。N社でも、Cさんと入社3年目のEさんの基本給の差が、20,000円から15,000円になりました。

これは法律上の問題ではありません。ただ、長く頑張ってきた方にとっては、少し複雑な気持ちになることもあります。

N社の社長は、毎年50円以上も最低賃金が上がる昨今の状況に頭を痛めており、自分の感覚で一人ひとりの給与を決めることに限界を感じていました。幸い会社の業績は順調なこともあり、誰がどんな役割や責任、権限を持っているか、何を頑張れば給与が上がるのかを明確にする人事制度を作ることを決めました。

社員には、最低賃金の見直しは国のルールによるものであること、来年に向けて給与の仕組みを見直していきたいことをご自身の言葉で伝えることにしました。社長が目指すのは「頑張りが報われる制度」。そして、「なんで私の給与は上がらないんですか?」と聞かれたら、「そうか、じゃあ、どうやったら上がるか一緒に考えよう。〇〇さんが昇給するために、私が力になれることは何だろう」と返したい。裁く人ではなく、伴走する人でありたい、とおっしゃっています。

最低賃金はここ数年、毎年大きく上がっています。毎年その場で調整するのではなく、等級や役割に応じた賃金テーブルを整えておくと、来年以降の対応もぐっと楽になります。

おわりに

最低賃金の引上げは、これからしばらく続いていく変化だと思います。

変化そのものは止められませんが、仕組みを整えておくことで、会社も社員も落ち着いて向き合えるようになります。今回の見直しが、自社の給与のあり方をふり返るきっかけになれば幸いです。

「うちの場合はどうだろう」と気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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参考資料
・厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金の改定額(答申)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75950.html