2026年度の賃上げ動向と「持続可能な経営」

こんにちは。今月は菊池が担当いたします。 労働市場はかつてない転換期を迎えています。
皆様も日々、「物価高」「人手不足」といった課題に直面されていることと存じます。その中でも「賃上げ」は、春闘や秋の最低賃金改定など、企業が常に向き合い続けなければならない最重要課題となりました。
今回は、2026年度の賃上げに関する最新調査(東京商工リサーチ TSRデータインサイト参照)を基に、企業が直面している現実と、進むべき方向性を解説いたします。

賃上げは
「実施して当たり前」
の時代へ

2026年度に賃上げを予定している企業は83.6%に達し、5年連続で8割を超える見込みです。
大企業: 93.8%
中小企業: 82.8%
特に人手不足が深刻な運輸業(93.4%)や製造業(90.1%)では9割を超えています。もはや「賃上げをしない」という選択は、採用や組織維持において極めて困難な状況と言えます。

「賃上げ率」に忍び寄る
「息切れ」の兆し

一方で、賃上げの「勢い」には変化が見られます。 賃上げ率「5%以上」を予定する企業の割合は35.5%(前年実績39.6%)と低下しました。連合(日本労働組合総連合会)は「全体5%以上、中小6%以上」を目標に掲げていますが、中小企業で「6%以上」を予定する企業は7.2%と、前年の半分以下に留まっています。
これは、コスト高騰が続く中で賃上げを継続しつつも、上げ幅については慎重にならざるを得ない、いわば「賃上げの息切れ」の状態を示唆しています。

背景にあるのは「攻め」
ではなく「守り」

賃上げを実施する最大の理由は、圧倒的に「従業員の離職防止(80.3%)」です。
2位:物価高への対応(65.5%)
3位:新規採用の円滑化(49.4%)
注目すべきは、「業績向上分の還元(30.5%)」といったポジティブな理由が低い点です。現在の賃上げは、利益を分配する「還元型」ではなく、人手を確保するために無理をしてでも行う「防衛型・先行投資型」の側面が強くなっています。

3割の企業が抱える
「持続可能性」への不安

今後5年先まで賃上げを継続できるかという問いに対し、30.4%の企業が「不透明・難しい」と回答しています。特に、公定価格により価格転嫁が難しい「医療業」や「道路旅客運送業」でその傾向が顕著です。
賃上げが困難な理由のトップは「価格転嫁が十分にできていない(44.7%)」であり、コスト増を収益で吸収しきれない構造的な課題が浮き彫りになっています。

社労士からの提言:
今、取り組むべき3つのこと

2026年度の賃上げは、もはや「経営課題」というより「生存戦略」に近いものです。しかし、無理な賃上げは固定費を膨らませ、将来の退職金や社会保険料負担を重くします。持続可能な経営のために、以下の3点を見直しましょう。

  1. 価格転嫁の徹底と利益率の改善 自社の努力だけでは限界があります。適正な取引価格の交渉を粘り強く行い、賃上げの原資となる利益を確保することが最優先です。
  2. 「公正な評価」に基づく賃金体系の再構築 一律のベースアップだけでなく、頑張りや成果が反映される人事制度を整えましょう。「賞与の増額」など、業績に連動させやすい柔軟な仕組みを検討することで、納得感のある分配と離職防止を両立できます。
  3. 生産性向上のための再投資(DX・業務効率化) 「少ない人数でも高い付加価値を生む」組織への変革が不可欠です。賃上げと並行して、業務のムダを削る投資を止めないことが重要です。

賃上げの原資は「利益」からしか生まれません。貴社の持続可能な成長のために、今一度、中長期的な人件費計画を見直してみませんか?

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出典:東京商工リサーチ TSRデータインサイト
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202517_1527.html